ライカ、空気が写るとは?その秘密をわかりやすく解説

2019/2/28更新

空気が写るライカとは

「空気が写るライカ」と最初に表現したのは木村伊兵衛(きむらいへい)(1901-1974)と言われている。木村伊兵衛は20世紀に活動した日本を代表する写真家の一人でありライカ使いであり演出のない自然な写真を撮ることで知られている。彼は何を意図して空気が写るライカと言ったかは定かでは無いが筆者が感じた「空気が写るライカ」の意味についてわかりやすく解説する。

空気が写るとは、何が写るのか

「空気が写るライカ」の「空気」とは何が写るのか。ライカの写りと他のカメラの写りとは何が違うのか?

空気が写るライカ
2018/10/30 東京 銀座、LEICA M240 Summicron 50mm f/2 first(筆者撮影)、画像クリックで生画像を表示

上記写真はライカのデジタル レンジファインダーカメラ M240とSummicron 50mm f/2 fistレンズ(1965年製)で撮影した(撮って出し加工なし)写真である(画像をタップするとオリジナルのjpg画像を表示する)。

空気は透明だから目に見えないし写真にも写るはずが無いと思っているかも知れない。「空気が写るライカ」の「空気」を「空気感」(その場の雰囲気)と考えてみよう。ライカが「空気感を写す」ことは誰もが納得できる言葉である。

1990年代にデジタルカメラが発明されて以来、技術革新は加速し現代になり誰もが高性能なカメラが付いたスマホを持つ時代になった。一眼レフやスマホのシャッターボタンを押すだけで誰もが簡単に綺麗な写真を撮ることができる。その綺麗な写真とライカで撮った写真を見比べると何かが違うのだ。スマホで撮影した写真は隅々までピントが合い細かい部分までしっかりと撮影できる。一眼レフならなおさらである。周辺減光も少なく画面全体が目の前の光景をそのままコピーしたかのように隅々まで綺麗に写る。

しかし、スマホや一眼レフの写真はなぜか味気ない。

ライカで写真を撮るとスマホやデジカメよりも美しい写真が撮れる。

ライカで撮影した写真は人間の「記憶」に似ている。目の前の光景を思い浮かべて目を閉じその光景を思い浮かべてみると隅々まではっきりと見えない。意識を注いでいた主題が印象に残りその他はぼんやりとしている。昨日や一昨日、過去のことならなおさらだ。嫌な記憶や思い出したくない記憶は忘れ、美しい記憶だけを思い出す。ライカで撮影すると人間が気づかなかった世の中の美しい場面を、人間の代わりに写真に記録することができる。人間が心の中で感じたけれど目に見えない何か。それが空気感であり空気が写ると表現できるのだと思う。

目には見えないけれど確実に存在している。目に見えないけど無くなると生きられないのが空気である。

ライカで撮影した写真を見ると、撮影時に見た場面を記憶の奥から呼び戻すことができる。晴れたあの日の空気の匂いや暖かさ、音まで含めたあの日の雰囲気、それこそがライカが写す「空気」なのだろう。

ライカはなぜ空気が写る

ライカで空気が写るのに、一眼レフやスマホカメラで空気が写らないのはなぜか、両者の違いを考察してみる。

さあ写すぞと気合いを入れて撮るのが一眼レフ、演出のない自然な情景を撮るのがライカ

さあ写すぞと気合いを入れて撮るのが一眼レフ、演出のない自然な情景を撮るのがライカである。

一眼レフやスマホで撮影を行う時、今から写すぞと無意識のうちに気合いが入る。シャッターを切る瞬間にファインダーが暗転し「カシャーン」という甲高いシャッター音が響く。たとえ写す時に気合いを入れなても大きなシャッターを聞いた被写体は「写真を撮られているんだ」と意識することになる。静かに流れていたその場の雰囲気はシャッターを切った瞬間にシャッター音とともに分断されてしまい雰囲気の流れが変わってしまう。

ライカでスナップ撮影を行う時、レンジファインダーの中に見えるブライトフレームで撮影範囲を決め、シャッターボタンを押すと「プシュン」と小さなシャッター音が響く。シャッター音もカメラも小さいので被写体には意識されることなく(気づかれないことも多い)その場の雰囲気の流れも同じ時間で流れ続ける。シャッターが切られる瞬間にファインダー内は暗転せず撮影前後もファインダー内から見た世界はそのまま流れ続ける。

数枚撮影を行ったとしてもその場の空気感は変わらない。だから自然な情景、その場の雰囲気が写真として記録される。

場面の隅々まで綺麗に写るのが一眼レフ、フォーカスの合った箇所は鋭くそれ以外はぼけるのがライカ

スマホや最近の一眼レフズームレンズで撮影すると隅々までピントが合い、パンフォーカス気味に画面全体が綺麗に写る。画面周辺部も周辺減光は少ない。

ライカは原則明るい単焦点レンズを使うのでフォーカスが合っている箇所以外ばぼやけて写る。ライカレンズは光学性能が素晴らしくフォーカスが合った箇所は精細に描写され、アウトフォーカスの前景や背景は綺麗にぼける。またライカレンズは現代の一眼レフ用のレンズと比べると周辺減光があり写った写真の中央は明るく、四隅は少し暗く写る。それは人間の目が見ることに似ている。目の前に自分の指をかざして指にピントを合わせると背景はぼやける。背景にピントを合わせると指がぼやけて見える。そして周辺部には何があるかよく分からない。その主題にフォーカスが当たっている写真が人が見えている映像に似ているのだ。

上記サンプル写真(撮影日時2018年10月30日14:14)はライカM240に初代ズミクロン50mmレンズを付けて撮影した。このレンズは1965年製造と筆者が生まれるよりも昔に作られたレンズであるが現代のデジカメライカで使っても見事に空気感を写すことができる。フォーカスが合っているのは手前右側を歩く二人であるがその奥を歩く黄色いポリ袋を持った女性にもわずかにピントが合い、奥で横を向いている男性はぼやけている。歩道もフォーカスが合った手前から奥にかけてなだらかにアウトフォーカスし、奥行き感がうまく表現されている。空は上に行くほど青色が濃くなり10月という秋の澄んだ空気感まで映し出されている。一枚の写真なのに、なぜか立体感を感じないだろうか。2D写真なのに3D写真っぽく写るのもライカの特徴である。写真に立体感があるから写真を見るとその場の空気感を感じるのである。

もし同じ場面をスマホで撮影したとすると、全景から背景までパンフォーカスに写りこれほど立体的には見えないだろう。

同じ場面を一眼レフで撮影したとすると、一眼レフはズームレンズが使われることが多くまた周辺減光も無いのでこれほど立体的に見えることはないだろう。

雰囲気に加えて立体感まで撮影できるのがライカなのだ。

臨場感が写るライカ

臨場感が写るライカ
2019/2/2 東京 銀座、LEICA M10-D Noctilux-M 50mm f/0.95 ASPH.(筆者撮影)

上記は、LEICA Noctilux-M 50mm f/0.95 ASPH.というレンズを使いM10-Dというライカ デジタルレンジファインダーカメラで撮影したものである(撮影日時2019年2月2日18:34、Adobe Lightroomで現像)。同じ50mmレンズながら開放絞り0.95という明るいレンズである。写真の右側を歩くカップルの女性はこちらが撮影していることに気づいているが冬の夕方にビルに反射した太陽光が地面を照らして浮かび上がった歩く人達の臨場感がうまく表現されている(写真をタップすると原寸大写真を表示)。

写真をタップして原寸大表示させると、女性の洋服のファスナーやズボンの布の質感、跳ねた髪の毛の一本まで細かく表現されつつ前景や背景は乱れるようにぼけていることが分かる。特に右上背景の光った箇所はサジタルコマフレアにより変な形のボケになっている。拡大写真を部分部分で見ていくと現代の一眼レフレンズとは異なるボケ味でありながら写真全体で見るとライカ独特の不思議な写真に仕上がっている。現代一眼レフの品質基準で考えるとこのボケを見てひどいレンズと思うかも知れないが、ライカ基準で考えるとライカらしい美しい写真に見えるから不思議だ。

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