レンジファインダーの意味をわかりやすく解説。

2019/8/3更新

レンジファインダーとは

レンジファインダー(Range Finder)とは、光学視差式の距離計をいう。ドイツ語ではレンジファインダー(距離計)のことを「Meßsucher 」(メスズハーと読む)といいその頭文字の「M」がM型ライカの由来となった。

レンジファインダー(距離計)の仕組み

人間が左右の目で被写体を見ることによりその被写体までの距離が遠いか近いかを認識できると同様に、レンジファインダー方式の測距を行うカメラには左右二つの目が付いている。M型ライカでは、カメラに取り付けたMマウントレンズのフォーカスリングを回すとカメラの距離計が連動して動作しファインダー内の二重像が左右に動き、二重像が重なったところがレンズのフォーカスが合致する。

LEICA M3
レンジファインダーカメラ LEICA M3(1958年製、筆者所有)。カメラの上は露出計。

上記はライカの最初のM型であるライカM3カメラである。レンズの上に横に並んでいる3つの窓のうち左右外側の窓が距離計で使われる窓である(中央は採光用の窓)。上記写真の向かって右上の窓がファインダーからの覗き窓でありここから被写体を覗いて見る。左上の窓が距離計用の窓である。

ライカ レンジファインダーカメラのピント調整方法

レンジファインダーカメラでピント調整を行う方法は次の通りである。ライカのレンジファインダーカメラであるライカM型カメラのファインダー覗くと次のように見える。

LEICA ファインダー
ライカ M240で見たファインダーのイメージ(画面中央に小さな四角で2重に見えている箇所でピント調整を行う)

カメラ背面のファインダーはガラスでできたのぞき窓のようなものである。ファインダーを覗くと目の前の被写体がガラス窓を覗くように見える。カメラに装着したレンズを通さずに被写体を見るので広角レンズまたは望遠レンズにレンズ交換しても被写体の大きさは変わらない。

ファインダー内には上記写真のように白い枠が表示されこの枠が実際に写真撮影できる範囲である。ライカM型の場合、装着するレンズの焦点距離によりこの白い枠の大きさが自動的に変化する。この白い枠をブライトフレームと言う。上記は50mmレンズ、75mmレンズを使用する際のブライトフレームのイメージである。外側の枠が50mmレンズの撮影範囲で内側の枠が75mmレンズの撮影範囲を表す。実際はブライトフレームの表示サイズはもう少し小さく見える(ブライトフレームの外側の部分がもっと広く表示される)。

フレームの中央には小さく四角く、目の前の像が少し左右にずれた二重像エリアが見える。レンズのフォーカスリングを回すと、レンズとカメラが機械的に連動してファインダー内の二重像が左右に動く。二重像がピタリと重なったところでフォーカスが合焦する。

その昔フイルム一眼レフカメラを使ったことがある方はファイナー内でマイクロプリズムを使って中央の丸い円内の上下の像を縦一直線に重ねることによりマニュアルフォーカスを行ったことを覚えているかも知れない。使用感覚的には、一眼レフのマイクロプリズム方式のマニュアルフォーカスに似ている。二重像の四角いエリア内の合致させるか、または、二重像のずれた被写体と、その四角の上下との境目を見て縦一直線に合わせることによりマニュアルフォーカスを行う。

レンジファインダーカメラのメリット

レンジファインダーカメラは一眼レフカメラやミラーレスカメラと比べて次のようなメリットがある。

レンジファインダーカメラ、視野率は100%以上。目の前の3D空間を切り取る感覚が心地良い

ライカ レンジファインダーカメラはファインダー内に撮影範囲がブライトフレームで表示され、そのフレームの内側だけでなく外側もクリアに見ることができる。つまり視野率は100%以上である。国産一眼レフでファインダーを覗くと撮影範囲だけが見え、しかもフォーカスが合っている部分だけがクリアに見えピントが合っていない箇所はぼけて見える。レンジファインダーカメラはレンズのフォーカス位置にかかわらず手前も奥も全体がクリアに見えると同時に、撮影範囲の上下左右の外側までクリアに見える。ライカ M10-Dで50mmレンズを使用すると実際に撮影する範囲の2倍以上の範囲をファインダー内で見ることができる。

一眼レフカメラ・ミラーレスカメラの視野率は最大100%(つまり撮影する範囲しか見えない)である。エントリーモデル一眼レフの場合視野率が90%程度の一眼レフも存在する(つまり、撮影する範囲のうちの90%しか見えない)。

レンジファインダーカメラの場合広い範囲を見ながらカメラをフレーミングして撮影を行う範囲を切り取る感覚であり、一眼レフはカメラをフレーミングしながら撮影する範囲を探す感覚だ。レンジファインダーカメラは広い範囲を見ることができるのでフレームの中に人が歩いて入ってくることを予測できたり素早くフレーミングできたりするのでフレーミングしやすい、シャッターチャンスに強いというメリットがある。一眼レフとレンジファインダーカメラの両方を使って見るとこのフレーミングの感覚が全く異なることに気づくだろう。

さらに、レンジファインダーカメラは上下左右の広い範囲を見られるのと同時に前後の奥行きに関してもファインダー内がぼやけること無く見ることができる。一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラは撮影するレンズを通した映像を見ているのでフォーカスが合った箇所はピントが合って見やすいがフォーカスが合っていない箇所はぼけた状態で表示される。そのため開放絞りが明るいレンズを使って一眼カメラで撮影する際はフォーカスが合った前後の薄い範囲のみを見ながらフレーミングを行うことになる。レンジファインダーカメラはレンズとは独立したガラスを通じて世界を見ている感覚なのでスナップ撮影時など刻々と場面が変わる被写体を撮影する際はより素早くフレーミングできるというメリットがある。

上記の通り、レンジファインダーカメラは目の前の被写体全体を見ながら両手の人差し指と親指で作った「フレームを上下左右に動かしながら」撮影範囲を探してマニュアルフォーカスを行い「3D空間を切り取る感覚」、一眼カメラは両手の人差し指と親指でフレーミング枠を目の前に置いてその枠内だけを見ながら上下左右に「頭を動かしながら」撮影位置を決める感覚である。言葉で示して理解するのは少々難しいかも知れないがレンジファインダーカメラの「3D空間を切り取る感覚」が、一眼カメラとは全く異なり心地良いのである。

レンジファインダーカメラ、撮影する瞬間もファインダーがブラックアウトしない

レンジファインダーカメラーは一眼レフと異なりミラー跳ね上げは無く撮影する瞬間もファインダーがブラックアウトしない。そのため、常に被写体を見続けることができる。撮影した瞬間に被写体が瞬きしたかどうかもファインダー内で確認することができる。ファインダー内は常に全体がクリアに見えたままので撮影した瞬間に次の撮影に備えることができ最高のタイミング、最高のフレーみんぐいで撮影できるというメリットがある。

一方、一眼レフカメラやミラーレスカメラはその仕組み上、シャッターを切った瞬間つまり写真を撮る瞬間にファインダー内がブラックアウトしてしまう。

レンジファインダーカメラ、レンズに関係なくファインダーは明るくてクリア

レンジファインダーはレンズを通さずにカメラに付いているファインダーガラスを通じて被写体を見る。そのため、暗いレンズを使ったとしてもファインダーは明るくてクリアである。また、開放絞り値が小さい明るいレンズを使ったとしてもファインダー内がぼけることなく、被写体全体をクリアに見ることができる。

レンジファインダーカメラ、一眼レフカメラよりもコンパクト

レンジファインダーカメラは、一眼レフカメラと異なりミラーボックスやペンタリズムが無いのでその分カメラをコンパクトに設計できるというメリットがある。ミラーボックスが無い分フランジバック(レンズマウント面とフイルム面との距離)も短くでき、レンズもコンパクトになるというメリットもある。

レンジファインダーカメラ、一眼レフカメラよりもシャッター音が静か

レンジファインダーカメラには、ミラー機構が無いのでシャッターを押した瞬間のミラー跳ね上げ音が無い分一眼レフカメラよりもシャッター音が静かになるというメリットがある。Nikon D5、D4などのプロ用一眼レフのシャッター音はカシャン、カシャカシャ、ガガガガガガッのように大きな音がするがライカM10-Dのシャッター音はプシュン、またはコトンという本当に静かな音しかしない。スナップ撮影時にはシャッター音が響かないレンジファインダーで撮影することにより被写体に意識されることなく自然な姿を撮影できるというメリットがある。

レンジファインダーカメラ、一眼レフカメラよりもレンズがコンパクト

レンジファインダーカメラはミラーボックスが無いのでフランジバック(マウント面とフィルム面との距離)を短く、ミラーが無いのでレンズの後ろ玉をよりフィルム面に近くすることができる。そのためレンズはより高性能に、そしてよりコンパクトなレンズを作ることができる。

レンジファインダーカメラのデメリット

レンジファインダーカメラは一眼レフカメラやミラーレスカメラと比べて次のようなデメリットがある。

レンジファインダーカメラ、正確なフレーミングが難しい。最高のタイミングで撮影できるメリットが大きい

レンジファインダーカメラは視野率100%以上というメリットがあるが、ブライトフレームで撮影範囲の目安が表示される方式のため少し目を上下左右にずらすとフレーム表示位置も微妙にずれることが分かる。つまり、見える範囲と撮影される範囲を100%きっちり合わせるのが難しい。しかしそのデメリットよりも、視野率100%で撮影しない範囲も見ながら撮影を行うことができることにより、より良いタイミング、より良いフレーミングで撮影できることのメリットの方が大きい。

レンジファインダーカメラ、正確なフォーカスが難しい。最高のタイミングで撮影できるメリットが大きい

レンジファインダーカメラは実際のレンズと通してフイルム面に写る映像を見てフォーカスするわけではなくレンズと機械的に連動した距離計を用いてフォーカス合わせを行う。そのため、望遠レンズを開放絞りで使う際などにジャスピン撮影を行うことは難しい。微妙にフォーカスが合わないこともある。

しかし、フォーカスを合わせることよりもタイミングを合わせることに集中できるのでより良いタイミングで撮影できるというメリットは大きい。また、ジャスピン外れになることもあるので、たまに偶然ジャスピン撮影ができることにより予想外の美しい写真が撮れることがある。これが中毒性があるのである。パチンコを楽しんでも毎回勝つとは限らない、たまに当たりが出ると嬉しい、そんな感覚である。たまに予想外のベストショットが撮影できることので撮影を楽しいと感じるのである。

レンジファインダーカメラ、使うレンズの焦点距離が限られる

ライカ レンジファインダーの場合、ファインダー内のブライトフレームに対応するレンズ焦点距離は、28mm、35mm、50mm、75mm、90mm、135mm、以上の単焦点レンズのみである。なお、ブライトフレームには対応しないが、21mm、15mmなど距離計に連動できるレンズがあるがレンジファインダーで撮影範囲を確認することができない。

28mmよりも広角のレンズを使う際は、撮影範囲は外付けビューファインダーを利用する。外付けビューファインダーには、光学ファインダー、電子ファインダー、フレームファインダーの3種類がある。最近のM型ライカ デジカメは外付け電子ビューファインダーを使うことにより焦点距離が限られるという弱点はカバーできる。

レンジファインダーカメラ、近接撮影、精密なフォーカス合わせが苦手

レンジファインダーカメラは距離計の仕組み上、ピント制度やパララックスの問題から近接撮影が苦手である。ライカの普通のMマウントレンズの場合最短距離はレンズにより0.7mまたは1mである。また望遠系レンズにおいても絞り開放付近の被写界深度が低い場合は精密なフォーカス合わせが苦手である。

その点、ライカ M240以降のライカレンジファインダーカメラは外付けの電子ビューファインダーを取り付けることによりレンズを通してフィルム面に写る実像を使って精密なフォーカス合わせを行うことができる

また、1983年以前のM型ライカにおいてはVISOFLEX(ヴィゾフレックス)を使うことにより精密なピント合わせを行うことができる。

関連記事:ライカ ブライトフレームの仕組み、見え方, 基準長, パララックス

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